「凛として弓をひく」の感想
こんにちは。
1月も下旬に差し掛かり寒さもピークを迎えている今日この頃、不必要な外出は避けがちになりますね。もっともコロナ禍である状況なのでストレスなく外出を控えられてるという考え方もできますが・・・笑
さて本日は碧野圭さんの「凛として弓を引く(講談社文庫)」を読了しましたので、少しレビューしたいと思います。
レビューは初めてで度々上からの物言いになってしまうかもしれませんが、何卒ご容赦ください・・・。
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私がこの作品を読んで感じたことは次の3点です。
①弓道の表現が正確で素晴らしい
②弓道経験者はもちろん、未経験者でも読みやすい
③当たり前の幸せを再認識できる
1つずつ書き記していきます。
①弓道の表現が正確で素晴らしい
自分が中学生の頃と比べると弓道関連の作品は非常に増えてきたように思います。
当時から弓道の人気というかカッコよさはなんとなく世間に知れていたのだと思うのですが、自分は弓道の描かれた作品に対する不満がありました。
それは絵にしろ文章にしろ弓道の描写が適当でないことです。
例えば弓を引き絞る「会」という状態では射手の矢は自身の口角に添えるのが一般的ですがこれが添えられていなかったり、「離れ」→「残身」で全く馬手(右手)が動かなかったり、酷いものは弓を上下反対に持っていたり・・・
私はこういう細かいところが目に付いてしまう性分なので、適当な表現をされているものを見るとその作品全体の印象が悪くなってしまうのです。ゆえにあまり気にしないようにと心掛けていました。
しかしそこは弓道を題材にした書籍、弓の部位、射法の解説、漢字の使い方まで適切に表現されていました。著者の碧野さんは現在弐段ということですから、おそらく相当に気を使って執筆されたのではと推察します。今までにこれほど完成度の高い作品に出合ったことがなかったため一番の驚きでした。
②弓道経験者はもちろん、未経験者でも読みやすい
前述の①で弓道の表現が正確とお伝えしました。ただこれは裏を返せば弓道独特の言葉遣いや考え方を読者に伝えられるということになります。弓道のルーツは古来の弓術にありますから、経験者でも難解な表現が数多く存在しています。これらが弓道に対する壁(特に未経験者)を作ってしまっている面も少なからずあると思います。
しかしこの書籍ではそれらを簡潔に、それでいて要所をきっちりと網羅して物語が進んでいきます。まだ弓道を始めたばかりの人や、弓道に興味あるけど全然知らないという人にも読み進めやすいと感じました。
また、弓道における「体配(射における礼儀作法のようなもの)」の意味・意義が実例を交えてわかりやすく説明してくれており、私自身も納得でした。後輩たちにも読ませたいなと素直に感じました。笑
③当たり前の幸せを再認識できる
これは学生よりも社会人の方のほうが共感していただけるかもしれません。
物語の終盤、主人公が同時期に弓道会に加入したメンバーと段級審査を受ける場面が印象に残りました。主人公の「楓」は一般的な高校生で、自身が弓道をやることを家族に応援されています。しかし弓道会には家庭で深刻な事情を抱えている人や最近孫ができた中年の方人、はたまた外国から留学しに来た学生も所属しています。その人たちの背景を知った楓は最後に、弓道だけでなく日頃の生活を不自由なく過ごしていけること、それには周りの様々な人たちの支えがあり、逆に誰かの生活を自分が知らず知らずのうちに支えていることの大切さを知ります。
これは最近私が周りの人に本当にたくさん、数えきれないほど肉体的にも精神的にも助けてもらっていることを自覚するという経験をしたため、印象深く残っています。
スポーツの側面だけでなく様々な考え方を学ぶことができる、当たり前の幸せを感じることができるのが、弓道というスポーツの良いところだと思います。
最後に、弓道は他のスポーツにはない要素がたくさん詰まっています。普段は上手く言語化できずにもやもやとしていたのですが、この書籍はそれを見事に言語化していると感じました。経験者も未経験者の方も是非ご一読いただきたい作品です。
私としては続編を楽しみにしています。今度は試合の側面なんかどう表現されるのか見てみたいですね。笑
拙い文章ですが、ここまでご覧いただきありがとうございました。